このページのポイント
- 股関節が痛む原因: 加齢による軟骨のすり減りや筋力低下など複数の要因が重なって起こります。
- 代表的な症状と疾患: 主に足の付け根が痛むのが特徴。「変形性股関節症」のほか、骨折や壊死など様々な疾患が隠れていることも。
- 早めの受診を: 痛みを放置すると歩行障害や筋力低下が進み、生活全般に悪影響が。2週間以上続く痛みは整形外科受診の目安です。
- 治療法は大きく分けて2つ: まずは手術をせずに改善を目指す「保存療法」、それでも日常生活に支障が続く場合に「手術療法」を検討するのが基本です。医師と十分に相談し、最適な治療方針を選択しましょう。
- ケアして健康をキープ: 股関節は日常の動きを支える要。セルフケアに加え、専門医のもとで自分に合った治療を始めることが、いつまでも自分の足で歩き続ける生活を取り戻す鍵となります。

聞き手 所 幸子さん
埼玉県所沢市在住の70歳専業主婦。定年後の夫と二人暮らしで、独立した子どもや孫5人と交流が盛ん。ガーデニングや国内旅行、孫との時間を生きがいにしている。家族に迷惑をかけず元気でいたいと願う一方、3年前から続く右股関節の痛みが悪化し、将来への不安を抱えながら人工股関節手術を検討している。
(※本稿に登場する所幸子さんは架空の人物です)
股関節が痛くなる原因とは?
「年齢のせい」と諦めてしまいがちな股関節の痛み。
しかしその背景には、加齢による軟骨の摩耗だけでなく、体重増加、生まれつきの骨の形状、日頃の姿勢など、実はさまざまな要因が複雑に絡み合っています。
ここでは、なぜ股関節が痛むのか、その具体的な原因とメカニズムについて分かりやすく解説します。
日常生活における股関節の痛みとその原因
最近、歩いたり立ち上がったりすると股関節が痛みます。原因にはどのようなものがあるのでしょうか。
股関節の痛みにはいくつかの要因があります。
代表的なのは、加齢による軟骨のすり減り、体重増加による負担、先天的な股関節の形の問題、筋力低下や姿勢の崩れ、外傷や使いすぎなどです。
加齢による軟骨のすり減りとは?
関節の表面を覆っているクッションの役割をする軟骨が、年齢とともに少しずつ薄くなったり傷んだりすることをいいます。
軟骨は本来、骨と骨の摩擦を防ぎ、動きをなめらかにする働きをしていますが、長年の負担の積み重ねにより摩擦ですり減ってしまいます。
その結果、関節に炎症や痛みが生じやすくなるのです。


それほど高齢ではなくても、「股関節が痛い」という人を見かけます。
原因としては、スポーツや日常生活での過度な負荷、筋力バランスの崩れ、姿勢不良などがあります。また、先天的な股関節の形の問題が背景にある場合もあります。
先天的な問題とはなんですか?
たとえば生まれつきの骨格の問題で股関節への負担が大きくなり、将来の変形性股関節症につながることがあります。
体重も関係しますか?
大いに関係します。
股関節は体重を支える大きな関節です。
体重が増えると、それだけ関節にかかる負担も増え、長期間にわたり負荷がかかることで軟骨が傷みやすくなります。
結果として、変形性股関節症などの疾患につながることがあります。
ほかにも考えられる原因はありますか。
転倒や打撲などの外傷、股関節周囲の炎症、血流障害なども原因になります。
多くの場合、股関節痛は病気やケガだけでなく、加齢や体重、関節の形など複数の要因が重なって生じています。
もし痛みを感じたら、早めに整形外科を受診し、原因を確かめることが大切です。
「片側だけ痛い」「両側痛い」など、痛みにもいろいろありますよね。股関節の痛みの原因には以下のものもあります。
たとえば片側だけ痛い場合には「普段から右足重心である」など軸足が関係していることが考えられます。
ただし、変形性股関節症などの病気も疑われるので、一度検査を受けた方が良いでしょう。


股関節がポキッと鳴ることがあります。これは病気でしょうか?
筋肉が硬くなっていたり、股関節に過度な負担がかかったりすると、ポキッと鳴ることがありますが、気になる症状がなければ様子見で大丈夫です。
しかし痛みがある、引っ掛かりを感じるなどの症状があれば整形外科を受診することをおすすめします。
まとめ
股関節の痛みは、加齢による軟骨のすり減りだけでなく、体重増加、先天的な股関節の形状、筋力低下、姿勢不良、外傷など、さまざまな要因が重なって起こります。
原因は一つとは限らないため、痛みが続く場合は自己判断せず、整形外科で適切な評価を受けることが大切です。
股関節が痛くなる原因は一つではありません。
加齢による軟骨の摩耗、生まれつきの股関節の形状、怪我や感染など原因は多岐にわたります。
股関節自体が原因ではないケースもあります。
股関節の周囲の筋肉の炎症や腰椎の加齢性変化が原因で股関節が痛いと感じるケースもあります。
痛みが改善しない場合は、まず整形外科を受診してしっかりと診断してもらうことが大切だと考えます。
股関節の違和感、痛みがある方は以下の初診予約ボタンからお気軽にご相談ください。
股関節でよくみられる病気一覧
股関節にトラブルが起きると、主に足の付け根が痛み始め、進行するとお尻や膝にまで広がることがあります。
その背景には、代表的な「変形性股関節症」をはじめ、骨折、難病、スポーツ特有の障害など多岐にわたる疾患が隠れています。
それぞれの病気の特徴と違いを一覧でチェックしてみましょう。
股関節の疾患を詳しく解説
股関節が悪いとどこが痛くなるのですか?
股関節が悪いと、主に足の付け根(鼠径部<そけいぶ>)に痛みが出ます。
病気が進むとさらに痛みの範囲が拡大して、お尻、太ももの前や外側、膝の周囲などにも広がることがあります。
股関節の病気にはどんなものがありますか?
股関節に起きる病気にはさまざまなものがあります。代表的なものを一覧でまとめてみます。
- 変形性股関節症
- 発育性股関節形成不全
- 大腿骨近位部(きんいぶ)骨折
- 鼠径部痛症候群
- 骨盤骨折
- 特発性大腿骨頭壊死症
- 関節リウマチ (*1)
まず変形性股関節症から教えてください。
変形性股関節症は、股関節の軟骨がすり減って関節の機能が損なわれていく病気です。
関節の表面を覆う軟骨が加齢や過度な負荷などの影響ですり減ってしまうと、骨同士がぶつかり合うことになります。その結果、関節の痛みや動きの制限が生じ、歩行時や立ち上がり時に痛みを感じるようになります。
日本では女性に多くみられ、発育性股関節形成不全の後遺症や股関節の形成不全など、先天的な問題が関わっているケースが多く見られます。(*2)
発育性股関節形成不全とはなんですか?
発育性股関節形成不全は、成長過程で股関節が外れて脱臼しやすくなる状態のことをいいます。
抱っこの仕方やおむつの使い方なども原因のひとつで、そのまま成長すると股関節の安定性が失われ、将来的に強い痛みや歩行障害を伴い、変形性股関節症を引き起こす可能性が高くなります。
研究により新生児1000人のうち1~3人の頻度で発生することがわかっています。(*3)
また、これと似た疾患に臼蓋(きゅうがい)形成不全というものもあり、発育性股関節形成不全と同じく、将来的に変形性股関節症のリスクが高まることがわかっています。
臼蓋形成不全についてもっと詳しく教えてください。
股関節は、骨盤のくぼみと太ももの骨の先端がぴったりとかみ合うことで成り立っています。
この骨盤側のくぼみを臼蓋といいます。
臼蓋形成不全は文字通り、この臼蓋の発達が不十分で浅いことを意味しており、寛骨臼(かんこつきゅう)形成不全とも呼ばれます。
臼蓋は、いわば股関節の“屋根”のような働きをしているため、これが浅いと太ももの骨をしっかり包み込むことができません。
そのため股関節が不安定になり、将来的に変形性股関節症を引き起こすリスクが高くなるのです。
原因には遺伝的な要因や子宮内での胎位異常、乳児期に股関節や膝を伸ばしたままにする習慣などが考えられており、患者さんの約8割は女性であることがわかっています。


次に、大腿骨近位部骨折とは何ですか?
大腿骨は、股関節に近い“首”の部分(近位部)がやや曲がった形をしており、構造上、力が集中しやすい特徴があります。そのため骨折が起こりやすいとされており、この部分の骨折を、大腿骨近位部骨折といいます。
特に骨粗鬆症で骨がもろくなった高齢者では、転倒や股関節をひねるといった軽いきっかけでも骨折につながることがあります。
大腿骨近位部骨折は、その後の歩行困難や車いす生活、寝たきりの原因になることも多く、高齢化が進む現代では、社会的に大きな問題とされています。(*4)
鼠径部(そけいぶ)痛症候群とは何ですか?
鼠径部痛症候群はグロイペイン症候群とも言われ、股関節の付け根(鼠径部)を中心に痛みが出る状態です。
特に走る、飛ぶ、座るなど運動したり体を動かしたりしたときに症状が出やすいという特徴があり、サッカーやラグビー、アメリカンフットボール、陸上競技、ダンスなど、骨盤や鼠径部に負荷をかけるスポーツを行う人に見られやすいとされています。
特発性大腿骨頭壊死症とはどんな病気ですか?
特発性大腿骨頭壊死症は、太ももの骨の先端(骨頭)の血流が悪くなり、骨が壊死してしまう病気です。
原因がはっきりしないことが多く、壊死が進行すると骨がつぶれ、股関節の痛みや可動域の制限などが起こります。
日本では難病の一つに指定されており、男性では40歳代、女性では60歳代での発症が多いことがわかっています。(*5)


関節リウマチも股関節に影響するのですか?
はい、関節リウマチは免疫機能に異常が起こり、関節に炎症が生じる病気で、股関節に広がることもあります。
滑膜(かつまく)という組織が炎症を起こすと徐々に関節が破壊され、痛みや動きの制限を生じます。
原因はまだ解明されていないため、治療が困難になることもありますが、悪化すると手指や全身の関節に広がる可能性があるため、早期の専門的な診断と治療が重要です。
これら以外にも股関節の問題はありますか?
股関節の痛みの原因には以下のものもあります。
- 骨盤骨折や関節周囲の骨折
- 感染性の股関節炎(化膿性股関節炎)
- FAI(大腿骨寛骨臼インピンジメント)や股関節唇損傷などのスポーツ関連障害
- 急激な痛みと関節破壊を来す急速破壊型股関節症
それぞれ原因や治療法が異なるため、痛みや違和感が続く場合は早めに整形外科で正確な診断を受けることが大切です。
まとめ
股関節の痛みの背景には、変形性股関節症や形成不全、骨折、壊死、炎症など、実にさまざまな疾患が存在します。
加齢や先天的要因、外傷、スポーツ、免疫異常など原因も多岐にわたります。症状が似ていても治療方針は大きく異なるため、自己判断せず整形外科で正確な診断を受けることが重要です。
(*1) 一般社団法人 日本股関節学会
(*2) 公益社団法人 日本整形外科学会
(*3) 一般社団法人 日本小児整形外科学会
(*4) 一般社団法人 日本股関節学会
(*5) 公益財団法人 難病医学研究財団/難病情報センター
股関節の疾患は一つではありません。
診察とレントゲン写真で診断がつくこともありますが、採血や追加の画像検査が必要になることもあります。
同じ股関節痛であっても治療方針が病気によって異なります。
同じ病気であっても患者さんの背景によって治療内容が異なることがあります。
股関節が痛い場合は整形外科を受診し、まずは診断をつけてもらうことが大切です。
そのあとで主治医とよく相談して、ご自身のライフスタイル、背景にマッチした治療法を見つけてください。
股関節の役割と重要性
普段意識することは少ない股関節ですが、人間の「体の土台」として、上半身を支えながら下半身の複雑な動きを同時にこなす、非常に重要な関節です。
そのため、ひとたび機能が低下すると腰や膝など全身のバランスが崩れる原因にもなります。
ここでは、知っておきたい股関節の役割と仕組みを解説します。
大きな役割を果たす股関節
なぜ股関節は重要なのでしょうか?
股関節は「体重を支える」と「大きく動く」という二つの役割を同時に担っているからです。
具体的に教えてください。
上半身の重さは骨盤を通じて股関節に伝わり、そこから足へと分散されます。
つまり、股関節は体の土台の要ともいえる関節です。
また股関節は、屈曲や伸展、内外旋、内外転など、さまざまな方向に大きく動かすことができます。
そのおかげで、歩く、向きを変える、しゃがむといった日常の動作をスムーズに行うことができるのです。


股関節はどのように安定性を維持しているのですか?
股関節は、軟骨、関節唇、靭帯、筋肉によって支えられています。
たとえば臼蓋の縁には、股関節唇と呼ばれる線維性の組織があり、これのおかげで受け皿がさらに深くなり、安定性が高まっています。


また、骨の表面は軟骨で覆われ、骨と骨がぶつかる衝撃を吸収したり、動きを滑らかにしたりしています。
さらに股関節は3つの強力な靭帯で覆われており、股関節を安定させるとともに過度な動きを防ぎ、脱臼を予防しています。
そのほか、お尻や太もも周囲の筋肉が股関節を取り囲んでおり、それによって安定性が高まっています。
ほかの関節と比べて、股関節の特徴は何ですか?
可動域が広く、強い負荷にも耐えられるという点です。
たとえば肩関節も股関節同様、球状の関節であり、非常に自由度が高く、動きの範囲が広いのが特徴ですが、股関節は肩よりも安定性が高く、体重を支える構造になっています。
また、肩関節には体重の負荷がありませんが、股関節は普通に歩行するだけでも体重の3〜4倍の力がかかるとされており、そうした負荷に耐えられるよう、強力な筋肉や腱(けん)で覆われているのが特徴です。
股関節が悪くなると、全身にも影響するのですか?
大きく影響します。
たとえば股関節の動きが悪くなると、その動きを代償するため、腰や膝に負担がかかりやすくなります。
その結果、これまで健康だった部位が痛み始めたり、歩行が困難になったりすることがあります。
実際、膝に痛みが生じていても、その原因は股関節にあった、という場合も少なくありません。
まとめ
股関節は、骨盤と大腿骨をつなぐ“体の土台”となる関節です。
体重を支えながら、前後、左右、回旋といった幅広い動きを可能にし、歩行や姿勢を安定させています。
強い靭帯や筋肉に守られ、非常に大きな負荷にも耐えられる構造ですが、ひとたび機能が低下すると腰や膝など全身に影響が及びます。
股関節は他の関節と比べて複雑な動きができる関節です。
また周囲が強力な筋肉や靭帯で覆われているため、非常に安定した関節であり、さらに歩く、走るなどの際に、体重の何倍もの負荷がかかる関節です。
それが故に股関節が病気になると日常生活に様々な不具合が出てきてしまいます。
股関節の病気を治療せずに放置すると股関節以外の部分にも徐々に悪影響を及ぼしますので、症状が軽いうちからしっかり治療することが大切だと考えます。
早期発見・早期治療が、全身への影響を食い止めることにつながります。まずは検査から始めてみましょう。
股関節が痛い場合の治療法
股関節が痛いと感じたら、我慢は禁物です。
治療のタイミングを逃さないためにも、具体的な治療の流れと判断基準を押さえておきましょう。
痛みの強さや日常生活への影響、進行度に合わせて最適な治療を選んでいくことが基本です。
自分に合った適切な治療を
股関節が痛い場合、どのような治療法がありますか?
股関節の治療は、大きく「保存療法」と「手術療法」の2つに分けられます。
どちらを選択するかは痛みの強さ、日常生活への影響、画像検査の結果、年齢や活動量などを総合的に判断して決めます。
一般的には、まず手術を行わない保存療法から始め、経過をみながら手術療法を検討する流れになります。
保存療法とは、具体的にどのようなことを行うのですか?
保存療法は、手術をせずに症状の軽減や機能改善を目指す治療です。
具体的には、痛み止めや消炎鎮痛薬の内服、湿布などによる薬物療法があります。
また、理学療法士の指導を受けながら行う運動療法(リハビリテーション)も重要です。
運動療法ではどのようなことを行うのですか?
運動の内容は病態や症状、患者さんの年齢などによって異なりますが、多くの場合、股関節まわりの筋肉、特にお尻や太ももの筋肉を鍛えます。
こうすることで関節の安定性が高まり、負担を軽減できるからです。
それから、お尻の上部外側にある中殿筋は、股関節を近い位置で支える重要な筋肉。
これを鍛えると股関節の安定性が高まったり、歩く時にバランスを取りやすくなったりします。(*6)
そのほか、関節の可動域を広げたり、筋肉を柔軟に保ったりするためにストレッチも有効です。
そのほか、保存療法で行うべきことはありますか?
体重管理や杖の使用、生活動作の見直しなども大切な要素です。
これらを組み合わせることで、痛みをコントロールしながら生活の質を保つことを目指します。
保存療法でどのくらい様子を見るのでしょうか?
痛みの程度や改善の度合いをみながら、一定期間、保存療法を継続します。
病態や症状によっても異なりますが、たとえば変形性股関節症の場合、初期や進行期であれば、まずは数か月単位で保存療法を行い、日常生活への影響がどの程度軽減するかを確認します。
痛みが安定し、生活に大きな支障がなければ、そのまま保存療法を続けることもあります。
どのような場合に手術が検討されるのでしょうか?
保存療法を十分に行っても改善がみられない場合に、手術療法が選択肢となります。
具体的には、以下の症状に当てはまる場合には手術を検討します。
また、画像検査で関節の変形が進行していると判断される場合も、手術が検討されます。
- 股関節痛が2、3か月以上続いている
- 薬、リハビリ、注射などで症状が改善しない
- 階段や歩行が困難になってきた
- 安静時でも痛みがある
- 夜に寝ている間にも股関節が痛む
- 日常生活が制限されている
- 楽しみな運動、旅行などの趣味ができなくなってきた
また、画像検査で関節の変形が進行していると判断される場合も、手術が検討されます。
できれば手術を避けたいのですが、我慢し続けるとどうなりますか?
手術のタイミングを逃すと病気が進行し、さらに手術の難易度が上がることもあります。
たとえば変形性股関節症のように、初期から進行期、末期へと病気が進行していくことが多い疾患の場合、適切なタイミングで手術をしないと病気が進んで関節の変形が加速し、最終的には歩けなくなるリスクもあります。
そのためガイドラインでも、「進行が予想され、手術的な矯正で関節温存が図れる場合には早期の手術がすすめられる」と述べられています。(*7)
まとめ
股関節の治療は、まず保存療法で痛みの軽減と機能改善を目指し、それでも日常生活に支障が続く場合に手術療法を検討するのが基本です。
我慢し続けることで病状が進行することもあるため、症状の経過をみながら適切なタイミングで治療方針を見直すことが大切。
医師と十分に相談し、自分に合った選択を心がけましょう。
(*6) 公益財団法人 日本股関節研究振興財団
(*7) 公益社団法人 日本整形外科学会
股関節の治療法は大きく保存療法(手術以外の方法)、手術療法に分かれます。
まずは保存療法で経過をみることになります。
ただし股関節痛が長期間続く、痛みが徐々に増悪している、日常生活に不具合が生じている場合は手術療法が検討されます。
特に痛みによってご自身の楽しみにしていることを諦めるケース(スポーツ、旅行など)は精神面にも影響してきますので、手術を検討する理由になると考えます。
進行を抑えるためにも、気になる症状があれば我慢せず、医師による適切な診断を受けるようにしましょう。
股関節の手術にはどのようなものがあるのか?
保存療法で痛みが改善しない場合や、関節の変形が進んで日常生活に支障が出ている場合は手術が検討されます。
股関節の手術にも種類があり、ここでは年齢やライフスタイルに合わせた最適な選択肢について解説します。
股関節疾患の手術方法について
股関節の手術には、どのようなものがありますか?
股関節の手術は、大きく「関節を温存する手術」と「人工股関節に置き換える手術」の2つに分けられます。
どの方法を選ぶかは、年齢、病気の進行度、関節の変形の程度、骨の状態、痛みの強さ、日常生活への影響などを総合的に判断して決定します。
なぜなら、手術の目的は単に痛みを取ることだけではないからです。歩行能力を回復させ、自立した生活を維持し、生活の質(QOL)を向上させることを大きな目標に掲げ、それに相応しい治療法を選択することが必要です。
関節を温存する手術とは、どのような手術ですか?
簡単にいえば、自分の股関節をできるだけ残すことを目的とした手術です。
代表的なものに「骨切り術」があります。これは、股関節周囲の骨を切って角度や位置を調整し、傷んでいない部分に体重がかかるように骨の配置を変える方法です。
これにより関節への負担が軽減され、痛みの改善が期待できます。


どんな人が骨切り術を選ぶことが多いのですか?
比較的若年で、関節の変形が初期から中期段階にとどまっている方が対象となることが多いですね。
自分の関節を残せる点が大きなメリットですが、人工股関節置換術に比べて回復に時間がかかるなどのデメリットもあります。
そのため、どちらを選ぶか慎重に判断することが必要です。
「人工股関節に置き換える手術」とは何ですか?
文字通り、傷んだ関節を人工の部品に置き換える手術のことです。
最も一般的なのは「人工股関節置換術」です。これは、股関節の受け皿となる部分や、太ももの骨の先端部分を人工物に置き換える治療法です。
多くの場合、関節の変形が進行し、保存療法や関節温存手術では改善が難しい場合に選択されます。
人工股関節に置換することで痛みが大幅に軽減し、歩行機能が回復するケースが多くみられます。


人工股関節は一生、使えるのですか?
現在の人工股関節は耐久性が向上しており、長期間にわたって好成績が報告されています。
ただし、年齢や活動量によっては将来的に再手術が必要になるリスクもあります。
特に40〜50代の患者さんで、身体を動かす仕事に就いていたり、スポーツを日常的に行っていたりする方の場合には、人工股関節の耐久性が問題視されることも。
そのため、どちらの手術を行うかを選択する時には、今後のライフスタイルや生活習慣なども考慮することが大切です。
まとめ
股関節の手術には、関節を残す骨切り術と、人工股関節に置き換える方法があります。
年齢や病状の進行度、生活背景を踏まえて最適な治療法を選ぶことが重要です。
痛みの軽減だけでなく、歩行機能や生活の質の向上を目標に、将来のライフスタイルも見据えて医師と十分に相談しながら判断することが大切です。
股関節の手術には、関節を残す骨切り術と、インプラントに置き換える人工関節置換術という方法があります。
年齢や股関節の状態、患者さんの背景を含めて主治医と相談しながら最適な治療法を選ぶことが大切です。
変形性股関節症と診断されている方で、マッサージや通院をしてもなかなか症状が改善されないなどでお悩みのかたもお気軽にご相談ください。
股関節痛を放置するとどうなるか
「まだ少し違和感があるだけだから」と痛みを放置していると、痛みをかばうことで筋力が低下し、さらに症状が悪化するという負の悪循環に陥りかねません。
活動量が減ることは、体力低下だけでなく精神的な落ち込み(QOLの低下)にも繋がります。
手遅れになる前に知っておきたい、受診の目安とリスクをお伝えします。
生活への影響と受診のタイミング
股関節の痛みをそのままにしておくと、どうなりますか?
痛みが続くと、関節の機能だけでなく生活全体に影響が及びます。
最初は「少し違和感がある」「歩き始めが痛い」といった軽い症状でも、放置すると徐々に動くことを避けるようになります。すると股関節まわりの筋肉が弱り、関節の安定性が低下します。
その結果、さらに痛みが強くなるという悪循環に陥ることがあります。
日常生活にはどのような影響がありますか?
歩行や立ち上がり、階段の昇り降りなどがつらくなります。
活動量が減ると体力が落ち、外出や趣味を控えるようになることもあります。
家の中にいる時間が増え、社会的な交流が減ると、気持ちの落ち込みにつながることもあります。
実際、股関節の動きが制限されたり、仕事や日常生活に支障が出たりすることによる心理的苦痛がうつに繋がることもあると指摘されています。
QOLを高めるためには、どのようなケアが必要ですか?
早めの対処と、継続的なセルフケアが重要です。
まずは痛みの原因を正確に評価し、適切な治療を受けることを心がけましょう。
そのうえで、股関節まわりの筋力を維持・向上させる運動、体重管理、姿勢の改善などを継続することが大切です。
痛いときにやってはいけないことは、無理をすること。
痛みは炎症が起きているサイン。
そのときは体を休ませ、早めに受診するようにしましょう。


受診の目安を教えてください。
股関節の痛みが安静にしていても治まらない、夜間に目が覚めるほど続く場合は早めの受診が必要です。
2週間以上、鈍い痛みが断続的または持続的に続く、徐々に痛みが強くなっている場合も注意が必要です。
また、足の爪切りや靴下を履く動作がしづらくなる、痛みをかばって歩き方が変わった、などの変化が見られる場合も、早めに整形外科を受診しましょう。
まとめ
股関節痛を放置すると、痛みの悪化や筋力低下を招き、歩行や日常生活に支障が広がります。
活動量の低下は体力や気力の低下にもつながり、生活の質を大きく損なうことがあります。
安静時や夜間の痛み、2週間以上続く症状、動きの制限や歩き方の変化があれば、早めに整形外科を受診することが大切です。
股関節の病気を長期間放置すると、筋力低下、歩行障害が進行し、精神的にも悪影響を及ぼし始めます。
お一人で悩み続けたり、我慢し続けたりせずに、まずは整形外科を受診して早期から治療を開始することが大切だと考えます。
まとめ
股関節は体重を支え、歩く、立つ、座るといった日常動作を担う「体の土台」となる関節です。
痛みの原因は加齢だけでなく、先天的な骨の形状、体重、筋力低下、外傷など多岐にわたります。
背景には変形性股関節症をはじめとするさまざまな疾患が隠れていることもあります。
治療はまず保存療法から始め、必要に応じて手術を検討します。
股関節痛を我慢すると日常生活に支障が及び、やがて歩行が困難になることもあるので、早めに受診し、自分に合った治療を選ぶことを心がけましょう。
股関節のポイント整理
- 股関節は体重を支える、「体の土台」となる重要な関節
- 痛みの原因は一つではなく、複数の要因が重なることが多い
- 背景には変形性股関節症などの疾患が隠れている場合がある
- 治療は保存療法から始め、経過に応じて手術を検討する
- 痛みを我慢し続けると機能低下やQOL低下につながる
- 安静時や夜間痛、2週間以上続く痛みは早めの受診を
股関節は人間の日常生活動作において重要な役割をもつ関節です。
ひとたび病気になり股関節の機能が障害されると、日常生活の質が大きく低下するばかりでなく、精神面にも大きな影響を及ぼしてきます。
人生100年時代と言われますが、お一人で悩むのではなく、ぜひ整形外科を受診されて早期に治療を開始してください。
股関節痛から解放されて、100年の人生をご自身の足で歩き切って欲しいと思っています。
早めの受診で、将来の関節の健康を守りましょう
股関節の痛みや違和感がある方は、自己判断せず、まずは正しい診断を受けることが大切です。
初期段階で適切な治療を始めることで、進行を防ぎ、日常生活の質を保つことができます。
当院では、股関節専門の医師が丁寧に診察・ご説明いたします。お気軽にご相談ください。

