このページのポイント
- 人工股関節置換術とは:傷んだ股関節を人工物に置き換え、痛みからの解放を目指す手術。
近年は耐久性が向上し、長期間安定して使えるケースが増えています。 - 手術の目安:薬や運動療法でも慢性的な痛みが改善しない場合に手術を検討します。
- 対象となる疾患:「変形性股関節症」のほか、関節リウマチ、大腿骨頭壊死症など様々です。
- メリットとデメリット:劇的な痛みの軽減が期待できる一方、脱臼や合併症のリスクがゼロではないことなどを理解しておきましょう。
- 術後の日常生活:深く曲げる・ひねるなどの動作に注意し、スポーツは低負荷なウォーキングや水中運動などがおすすめ。
- 手術から退院までの流れ:術後はリハビリを行い、状態に応じて2週間前後で退院するのが一般的。退院後は定期検診が大切です。
- 痛みの放置は禁物:我慢し続けると悪化するだけでなく、筋力が落ちて将来の介護リスクや精神的な負担も上昇します。

聞き手 所 幸子さん
埼玉県所沢市在住の70歳専業主婦。定年後の夫と二人暮らしで、独立した子どもや孫5人と交流が盛ん。ガーデニングや国内旅行、孫との時間を生きがいにしている。家族に迷惑をかけず元気でいたいと願う一方、3年前から続く右股関節の痛みが悪化し、将来への不安を抱えながら人工股関節手術を検討している。
(※本稿に登場する所幸子さんは架空の人物です)
人工股関節置換術を検討すべき症状
「まだ歩けるから大丈夫」「手術は大げさすぎる」と、痛みを我慢し続けていませんか?
一度すり減ると、戻ることはない股関節。
ここでは、日常生活のどんなサインが手術を考える目安になるのか、そして手術以外の選択肢についても専門医が解説します。
股関節の手術の目安
人工股関節置換術は、どのような場合に必要になるのですか?
人工股関節置換術(THA)が検討されるのは、股関節の痛みが強くなり、日常生活に大きな支障が出てきたときです。
たとえば、思い通りに歩けない、痛みで眠れないことがあるといった症状が出ている場合には手術を検討することが多くなります。
痛みがある場合には、すぐ手術を検討するのですか?
いいえ、痛みがあるからといって、すぐに手術になるわけではありません。
まずは手術を伴わない保存療法を行います。
保存療法には、痛み止めを服用する、運動療法を行う、体重を管理する、生活習慣を工夫するなど、さまざまなアプローチがあり、それらを試してどれくらい症状が改善するかを評価します。
しかし、保存療法を行っても十分な改善が得られず、痛みが慢性化している場合には、人工股関節置換術が選択肢となります。
特に痛みが強い場合には運動療法が困難になることもあるので、適切な時期に手術を検討することが推奨されています。(*1)
痛みのほか、手術を検討した方が良いサインはありますか?
関節の可動域が狭くなることでさまざまな障害が起きることがあり、それらも手術を検討すべきサインとなります。
股関節の動きが悪くなると、靴下を履く、足の爪を切る、和式トイレを使う、車に乗り降りするなどの動作が難しくなります。
こうした可動域制限が進むと生活の不自由さが強くなり、手術を考えるきっかけになります。(*1)


まとめ
人工股関節置換術は、股関節の強い痛みや可動域制限によって日常生活に大きな支障が出たときに検討される治療です。
まずは保存療法を行い、それでも改善が乏しい場合に手術が選択肢となります。
歩くことはできても杖が必要、外出を控える、旅行を諦めるなど生活の質が下がっている場合は、手術を考える目安になります。
痛みの強さだけでなく、どれだけ日常生活に影響しているかを総合的に判断することが大切です。
(*1) 整形外科シリーズ 「変形性股関節症」
股関節の痛みや可動域制限によって日常生活に支障が出たり、運動や旅行などの楽しみが制限され始めたら手術を検討してもいいと考えます。
「まだ我慢できる」と思わずに、まずは一度ご自身の股関節の状態をチェックしてみましょう。
股関節の痛みを放置することのリスク
「このくらいの痛みなら、もう少し様子を見よう」その判断が、思わぬ悪循環の始まりになるかもしれません。
痛みを我慢し続けると、関節だけでなく未来の健康寿命にまで影響を及ぼします。
具体的にどんなリスクがあるのか、詳しく見ていきましょう。
すり減った股関節は元に戻らない
股関節の痛みを我慢し続けると、どうなりますか?
股関節の痛みを放置すると、まず活動量が減っていきます。
股関節痛の原因として特に多いのが変形性股関節症ですが、これは進行性の病気です。
そのままにしていると軟骨のすり減りが進み、骨の変形も強くなっていきます。
すると痛みはさらに強くなり、歩くことや外出、家事などがだんだん不自由になってきます。
体を動かす機会が減ると、筋力や体力が低下し、股関節を支える力も弱くなります。
その結果、股関節への負担がさらに増し、痛みが悪化するという悪循環に陥りやすくなるのです。
股関節の状態もどんどん悪くなってしまうのですね。
炎症が長く続くと、関節のまわりを包んでいる袋状の組織である関節包が次第に厚みを増し、硬くなっていきます。
すると本来滑らかに動くはずの股関節が動かしにくくなり、関節の動く範囲が狭くなってしまいます。
この状態を医学的には拘縮(こうしゅく)と呼びます。
拘縮が起こると、単に「痛い」というだけでなく、股関節そのものが思うように開いたり曲がったりしなくなります。あぐらをかく、足の爪を切るといった何気ない日常動作が難しくなるのはこのためです。


生活の質にも影響しますか?
大きく影響します。股関節痛が続くと、買い物、掃除、洗濯、通院、趣味、旅行など、日常生活のさまざまな場面で不自由が増えていきます。
これまで普通にできていたことが難しくなると、自信を失ったり、外出を控えるようになったりして、QOLが大きく下がることがあります。
身体にはどのような影響がありますか?
股関節の痛みが続くと、足をひきずるなど、痛みのある側の足をかばうような歩き方をするようになります。
こうした歩き方を破行(はこう)といいます。
破行が続くと全身のバランスが崩れ、膝や腰に余計な負担がかかります。その結果、腰痛や膝痛が出てくることも少なくありません。
股関節の痛みが全身に影響を及ぼすのですね。
特に高齢者はロコモティブシンドロームにも気をつける必要があります。
ロコモティブシンドロームとは、骨や関節、筋肉など運動器の障害によって移動機能が低下した状態のこと。
その状態が持続すると将来的に介護が必要となるリスクも高まります。
まとめ
股関節の痛みを我慢し続けると、活動量の低下によって筋力や体力が落ち、さらに痛みが悪化する悪循環に陥りやすくなります。
炎症が長引けば股関節が硬くなって動きが制限され、日常生活の基本動作にも支障が出てきます。
さらに歩き方の乱れから膝や腰にも負担が広がり、ロコモティブシンドロームの進行や介護リスクの上昇にもつながります。
痛みを我慢し続けると、股関節以外の部位にも悪影響を及ぼします。
具体的には膝や腰などに負担がかかるようになり、筋力も低下し健康寿命にも影響する可能性があります。
また身体のみではなく精神にも悪影響を及ぼします。
外出を控えるようになり、隣人や友人とコミュニケーションの頻度が下がり、認知面にも影響を及ぼすこともあります。
人工股関節置換術とは一体どんな手術なのか
そもそも股関節はどんな仕組みで動いていて、どのように人工物で再現するのでしょうか?
近年進化している人工股関節。その構造や手術方法、寿命のリアルを解説します。
人工股関節と手術のしくみ
人工股関節置換術とは、どのような手術ですか?
人工股関節置換術とは、傷んだ股関節を人工関節に置き換える手術です。
痛みの原因となっているすり減った関節面を取り除き、金属やポリエチレン、セラミックなどでできた人工物に置き換えることで、痛みを軽減し、関節機能の回復を目指します。


そもそも股関節はどんな仕組みをしているのですか?
股関節は、骨盤側のくぼみである寛骨臼(かんこつきゅう)と、太ももの骨の先端にある大腿骨頭(だいたいこっとう)が組み合わさってできています。
簡単にいうと、寛骨臼というソケットに、大腿骨頭というボールがすっぽりはまるような構造です。


寛骨臼や大腿骨頭の表面は軟骨という、非常に弾力のある組織で覆われています。
これがクッション役を果たすことで、寛骨臼のなかを大腿骨頭が滑らかに滑り、自由度の高い動きが可能になっているのです。
人工股関節置換術では骨盤側の受け皿部分と、大腿骨頭のボールの部分を人工物に置き換えます。
人工股関節はどのような構造をしているのですか?
人工股関節は、以下の4つのパーツで構成されています。
- ステム 大腿骨に挿入する
- ヘッド ステムの先端についているボール。大腿骨頭の役割を果たす
- カップ 骨盤側の受け皿になる
- ライナー カップのなかに嵌め込まれ、軟骨の役割を果たす


4つの部品が一つの関節として組み合わさることで、股関節は滑らかに動くようになります。
これらの部品にはそれぞれ複数の種類があり、患者さんの骨の状態や体格、病状に合わせて最適な組み合わせを選択します。
人工股関節にすることで、なぜ痛みが軽くなるのですか?
股関節の痛みは、多くの場合、関節軟骨がすり減って骨同士がすれあうことで起こります。
そのため傷んだ関節を人工関節に置き換えることで、その痛みの原因そのものを取り除くことができるのです。(*2)
「人工股関節には寿命があり、一生使えるわけではない」と聞いたことがあります。
確かに以前はそのように言われていたこともありました。
しかし近年、人工関節の素材や手術技術は進歩しており、耐久性や安全性が向上しています。
「人工股関節の耐用年数は20~30年以上に延びた」という声も聞かれており、入れ替え手術が必要になる人は手術から20年後でおよそ6人に1人、30年後でもおよそ4人に1人程度ということも報告されています。
しかし、手術をしたあとに股関節に負荷をかけるような生活をしたり、定期検診を受診するのを怠ったりすると人工股関節の耐久年数が短くなることもあるので、必ず医師の指示に従うようにしましょう。(*3)(*4)
まとめ
人工股関節置換術は、傷んだ股関節を人工関節に置き換えることで、痛みの軽減と関節機能の回復を目指す手術です。
人工股関節は複数の部品を組み合わせて構成され、骨の状態や体格に合わせて選ばれます。
近年は素材や手術技術の進歩により耐久性も向上しており、長期間安定して使えるケースが増えています。
術後は人工関節を長持ちさせるためにも、生活上の注意を守り、定期検診を続けることが大切です。
(*2) 地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター
(*3) 公益財団法人 日本股関節研究振興財団
(*4) 一般社団法人 日本人工関節学会
傷んだ股関節をインプラントで置き換える手術を人工股関節置換術と言います。
以前に比べてインプラントの性能も向上し、耐用年数がおよそ20年から30年と言われるようになりました。
しかし手術の後、股関節に過度な負担をかけるような生活や運動は耐用年数の低下を招くので医師の指示にしたがって生活することが大切であると考えます。
人工股関節の詳細やご自身の状態に合わせた治療法について、まずは専門医に相談してみましょう。
人工股関節置換術の対象となる疾患
股関節を痛める原因には、さまざまな背景があります。
ここでは、人工股関節置換術が検討される代表的な4つの疾患や、年齢について詳しく紹介します。
手術を検討すべき症状
人工股関節置換術は、どのような病気の人が対象になるのですか?
最も多いのは、進行している変形性股関節症です。
変形性股関節症とは先天性の疾患や加齢が原因となって股関節の軟骨がすり減り、関節に炎症や変形が起こる病気のことをいいます。
軟骨のすり減りが著しく、股関節の痛みや可動域制限が進んだ場合に、人工股関節置換術が行われることがあります。
特に、薬物療法や運動療法などの保存療法では改善が難しく、日常生活に支障が大きい場合が対象になります。
変形性股関節症以外でも行われることはありますか?
たとえば関節リウマチによって股関節が大きく損傷した場合や、大腿骨頭壊死症で骨頭がつぶれてしまった場合などにも人工股関節置換術が検討されます。
関節リウマチの人にも人工股関節は行うのですね。
はい。
関節リウマチでは慢性的な炎症によって関節が壊れ、股関節にも強い痛みや変形が生じることがあります。
薬物療法で炎症を抑えることができても、すでに関節破壊が進んでいる場合には人工股関節置換術が必要になることがあります。
大腿骨頭壊死症とは、どのような病気ですか?
大腿骨頭壊死症は、太ももの骨の先端への血流が悪くなり、骨の組織が壊死してしまう病気です。
壊死しただけではほとんど症状はありませんが、進行すると骨頭がつぶれてしまい、強い痛みや変形をきたします。
この場合、人工股関節置換術が有力な治療選択肢になります。


いろいろな疾患が対象になるのですね。
そのほか大腿骨頚部骨折など、外傷によって股関節機能が損なわれた場合にも行われることがあります。
大腿骨頚部骨折とは、太ももの骨の付け根にある大腿骨頚部のうち、関節に近い内側部分が折れる骨折のこと。
高齢者が転倒した際に起こりやすい骨折で、特に骨粗鬆症のある女性では注意が必要です。
強い痛みのため、立つことや歩くことが難しくなることが多く、寝たきりのきっかけになることもあります。


手術に年齢制限はありますか?
近年では医療技術が進化し、体に負担の少ない手術の方法が開発されたこともあり、高齢者でも手術を受けられるケースが増えています。
関節の痛みによって日常生活に大きな支障が出ている場合は、90歳代であっても手術を検討することがあります。
ただし手術前に内科医や麻酔科医と連携し、安全に手術が受けられるかを十分に確認することが大切です。(*5)
まとめ
人工股関節置換術は変形性股関節症をはじめ、関節リウマチ、大腿骨頭壊死症、大腿骨頸部骨折など、股関節の痛みや機能障害が強く、日常生活に大きな支障をきたしている場合に検討される手術です。
年齢だけで一律に判断するのではなく、全身状態や合併症の有無も含め、安全に手術が受けられるかを確認したうえで治療方針を決めることが大切です。
(*5) 一般社団法人 日本人工関節学会
変形性股関節症や関節リウマチ、大腿骨頭壊死症や大腿骨頚部骨折が人工股関節置換術の対象疾患です。
それらの病気で保存療法でも改善に乏しい場合、全身状態が許せば手術を行います。
お一人おひとりに合った適切な治療を、専門医とともに進めていきましょう。
知っておきたい人工股関節置換術のメリットと手術の限界
手術を受けるという決断は、大きなメリットがある反面、とても勇気のいることです。
後悔のない選択をするために押さえておきたいポイントについて、専門医がお答えします。
手術のメリットとデメリット
人工股関節置換術のメリットは何ですか?
人工股関節置換術の最大のメリットは、痛みの軽減が期待できることです。その結果、歩行時の痛みがやわらぎ、立ち上がる、座る、階段を上り下りする、靴下を履くといった日常動作がしやすくなることが期待できます。
また、これまで痛みのために控えていた買い物や外出、旅行、趣味などを再開できるようになり、生活の質が向上することも少なくありません。
デメリットや限界もありますか?
人工股関節置換術は非常に優れた治療法ですが、万能ではありません。
長年使っているうちに少しずつ摩耗したり、ゆるみが生じたりする可能性もあります。
近年では人工股関節の品質が向上したとはいえ、特に若い年代で手術を受けた場合は、その後の使用年数が長くなるため、将来的に再手術が必要になる可能性も考慮しなければなりません。
そのほかにデメリットはありますか?
手術には、一定の合併症リスクがあります。
たとえば日本整形外科学会のガイドライン案では、代表的な頻度は次のように示されています。
- 脱臼 0.5~5%(初めて手術を受けた人の場合)
- 深部感染 0.1~1%
- 深部静脈血栓症(DVT)10~30%
- 症候性肺塞栓症 0.5~1%
- 神経損傷 0.1~4%
- インプラント周囲骨折 0.5~3% (*6)
もちろんこれらは頻繁に起こるわけではなく、予防策も進歩しています。
また「お尻の前側からアプローチする前方アプローチの方が、後方アプローチよりも脱臼リスクが低い」など術式による違いもあります。
しかし術前には、合併症のリスクがゼロではないということを理解しておく必要があります。
手術を受ければ、元通りになりますか?
「まったく元通りになる」と考えるよりは、痛みを減らし、日常生活を送りやすくするための手術と理解するのが現実的です。
多くの場合、歩行や立ち座りは楽になりますし、生活の質も大きく改善することが期待できます。
しかしもともとの関節可動域や筋力、病気の進行度、手術前の活動量などによって回復の程度には個人差があります。
また術後は脱臼を防ぐため、生活に制限が課されることもあります。
そうしたことを踏まえ、手術を受けるかどうか選択することが大切です。
人工股関節置換術の費用はどれくらいですか?
人工股関節置換術の医療費は、通常およそ200万円程度かかりますが、健康保険が適用されます。
さらに、自己負担額が一定額を超えた場合には高額療養費制度も利用できます。
70歳未満で標準的な所得の場合であれば、自己負担額は10万円程度になるでしょう。
ただし、実際の自己負担額は年齢や所得によって異なるため、詳しくは加入している保険の窓口などで確認しましょう。
まとめ
人工股関節置換術は、股関節の痛みを軽減し、歩行や立ち座りなどの日常動作を改善できることが大きなメリットです。
一方で、人工関節には摩耗やゆるみが起こる可能性があり、若い年代では将来的な再手術も考慮が必要です。
また、脱臼や感染、血栓症などの合併症リスクもゼロではありません。
メリットと限界の両方を理解したうえで判断することが大切です。
(*6) 公益社団法人 日本整形外科学会
痛みから解放されることによって、日常生活の質が改善されることが最大のメリットと言えます。
痛みによってできなかった旅行、運動などの楽しみが再開されることにより、精神的にも明るく、前向きになれることがメリットです。
しかし手術である以上、一定の確率で発生する合併症のリスクも存在します。
大きな合併症はインプラントが外れてしまう脱臼、細菌が股関節で増えてしまう感染症、下肢に血栓ができてしまうエコノミークラス症候群などです。
人工股関節置換術後の日常生活と制限
「手術をしたら、これまでの生活は諦めなければいけないの?」そんな不安を抱える方はとても多いです。
自分の足で歩く、よりよい生活を長く楽しむためのポイントを詳しく見ていきましょう。
生活やスポーツへの影響とは
手術後に動作制限はありますか? 禁忌肢位はありますか?
術後しばらくは、股関節に無理な姿勢を取らないよう注意が必要です。
特に深く曲げる、強くひねる、足を大きく内側に入れるといった動きは制限されることがあります。
ただし、制限の内容や期間は手術方法や患者さんの状態によって異なるので、必ず医師に確認しましょう。


正座や床に座る生活はできますか?
個人差はありますが、一般には股関節に負担をかけやすい和式動作は慎重に考える必要があります。
正座をする、布団で寝るといった和式の生活よりも、椅子に座る、ベッドで寝るといった洋式のスタイルの方が股関節への負荷が少ないため、一般的には生活スタイルを見直すことが推奨されています。
スポーツはできますか?
統計によると、術後3〜6ヶ月程度からスポーツを再開している方が多いようです。
しかし、サッカー、バスケットボール、バレーボール、テニスなど、強い衝撃や激しいひねり動作を伴うスポーツは、人工関節の破損や緩み、脱臼を招き、再手術のリスクが高まることから避けることが推奨されています。
また、ラグビーやアメリカンフットボールなどのコンタクトスポーツや、マラソン、ジョギングなど股関節に過度な負荷がかかるスポーツも控えた方が良いでしょう。
どんなスポーツがおすすめですか?
低負荷で関節に負担がかからないウォーキングや水中ウォーキングなどがおすすめです。
また、可動域を改善したり、歩行能力を向上させたりするため、無理のない範囲でストレッチをすることも有効です。


まとめ
人工股関節置換術後は、股関節に無理な負担をかけない生活が大切です。
深く曲げる、強くひねるなどの動作には注意し、正座など和式の生活より椅子やベッドを使う洋式の生活が勧められます。
スポーツは医師の指導のもとで再開し、ウォーキングや水中運動など負荷の少ない運動を選ぶようにしましょう。
(*7) 日本整形外科スポーツ医学会雑誌 VOL.36 NO.3, 2016
人工股関節置換術といっても様々な手術方法があります。
股関節の動きが硬い方もいれば、柔軟な方もいます。
手術方法も様々、患者さんの股関節の状況も様々ですので、手術後の動作制限などは主治医に確認することが大切です。
手術から退院までの流れを簡単に解説
手術を決めた場合、社会復帰までにどんな道のりが待っているのでしょうか。
いつから歩けて、いつ退院できるのか?痛みやリハビリは?などの疑問に、専門医が具体的にお答えします。
実際の流れ・期間をチェック
手術を受けると決まった場合、どのような流れになりますか?
まず術前検査を行い、全身状態や持病の有無を確認します。
採血、採尿、心電図、呼吸機能検査、胸部レントゲン、下肢CT、エコー検査などを行い、安全に手術ができるか評価します。
特に問題がなければ、入院日や手術日を決定します。
手術当日はどのように進むのですか?
手術は全身麻酔を使用します。
傷んだ股関節を人工関節に置き換える手術そのものは2〜2.5時間程度で終わります。
その後は病室で全身状態を確認しながら安静に過ごします。
手術直後は痛みや体のだるさがありますが、医療スタッフが状態を見ながら管理します。
何日で歩けるようになりますか?
多くの場合、術後早い段階からリハビリが始まります。
ベッド上での運動や立ち上がり練習、歩行練習を少しずつ進め、回復を促します。
早期に体を動かすことは、筋力低下や合併症予防の面でも大切です。
退院までにはどれくらいかかりますか?
入院期間は病院や患者さんの状態や、手術後の入院期間を患者さんの希望や年齢に応じて調整しています。
50代前後で早期退院を希望される方は、通常10日前後で退院が可能です。
高齢の方は、希望に応じて1か月前後の入院で十分なリハビリを行うことができます。
いつ頃から外出ができますか?
回復の程度によりますが、術後1ヶ月程度で散歩や買い物などの外出が可能になります。
また仕事復帰の時期には個人差がありますが、一般的には事務職なら手術後2〜4週間ほど、
一日中立って行う仕事なら6〜8週間ほどで再開できることが多いとされています。
ただし重いものを持ったり、体を動かすことが多かったりする場合はもう少し時間が必要なこともあります。
医師と相談して決めるようにしましょう。
退院後も通院は必要ですか?
多くの場合、1年ごとを目安に受診し、継続して状態を見ていきます。
診察では主にレントゲン検査を行い、人工関節の部品に異常がないか、ゆるみが起きていないかを確認します。
痛みがないから大丈夫と思わず、定期検診は忘れずに受けることが大切です。
また、定期受診の時期でなくても、違和感や痛みなど何らかの異常を感じた場合は、早めに受診してください。
まとめ
人工股関節置換術では、術前検査で全身状態を確認したうえで入院・手術に進みます。
手術後は早い段階からリハビリを開始し、状態に応じて10日前後で退院するのが一般的です。
退院後も人工関節の状態を確認するため、定期的な外来受診が欠かせません。
痛みがない場合でも、人工関節のゆるみや異常を早期に見つけるためには継続的な検診が重要です。
患者さんと相談し手術治療を選択された場合、全身状態を調べるための検査を外来でおこないます。
検査の結果、手術が可能と判断されたら、入院日・手術日を決定します。
手術当日は全身麻酔下で手術が行われます。おおよそ30分から1時間程度で手術が終わります。
手術後は早期に車椅子に移乗します。
翌日から本格的なリハビリが始まります。
患者さんの年齢や股関節の状況によって多少の前後はありますが、2週間前後で退院する方が多いです。一人暮らしのご年配の方は1ヶ月程度、十分リハビリをして帰られる場合もあります。
患者さんの状況に応じて退院時期は決定しております。
まとめ
人工股関節置換術は、股関節の強い痛みや可動域制限によって日常生活に支障が出たときに検討される治療です。
まずは保存療法を行い、それでも改善が難しい場合に選択されます。
手術によって痛みの軽減や歩行機能の改善、生活の質の向上が期待できる一方、合併症や人工関節の寿命といった限界も理解しておく必要があります。
術後は生活動作やスポーツに一定の注意が必要ですが、適切なリハビリと定期検診を続けることで、人工関節を長く安全に使うことができます。
術後の満足度を高めるために、手術のメリットと限界を正しく理解し、決断するようにしましょう。
人工股関節置換術のポイント整理
- 人工股関節置換術は、保存療法で改善しない強い痛みや生活障害があるときに検討される
- 歩行ができても、外出や旅行を控えるなどQOLの低下があれば手術の目安になる
- 人工股関節は複数の部品で構成され、痛みの原因となる傷んだ関節を置き換える手術である
- 対象となる主な疾患は、変形性股関節症、関節リウマチ、大腿骨頭壊死症、大腿骨頚部内側骨折など
- 手術には痛みの軽減という大きなメリットがある一方、脱臼、感染、血栓症などの合併症リスクもある
- 術後はリハビリと定期検診が重要で、生活上の注意を守ることが人工関節を長持ちさせる鍵になる
人工股関節置換術は股関節痛でお悩みの患者さんを痛みから解放することができる有用な手術です。
もっと早く手術を選択すればよかった、前向きに生きられるようになったとおっしゃる患者さんも多くおられます。
しかし、手術である以上一定の確率で発生する合併症のリスクも存在します。
ご自身が信頼できる股関節の専門医としっかり話し合い、合併症のリスクも理解した上で手術を選択することが大切です。

