このページのポイント
- 変形性股関節症の特徴:動き始めの一瞬の痛みや歩き方の違和感は体からのサイン。膝の痛みとして現れることも。
- 症状の進み方: 徐々に進行します。最初は短時間の痛みですが、進行すると日常生活に大きな支障をきたします。
- なぜ股関節が痛むのか: クッションである軟骨がすり減ることが原因。日本では生まれつきの骨の形が要因になるほか、近年は加齢による発症も増えています。
- 放置するリスクと受診の目安:痛みを我慢し続けると、筋力や生活の質が低下します。早めの受診で進行を最小限に抑えましょう。

聞き手 所 幸子さん
埼玉県所沢市在住の70歳専業主婦。定年後の夫と二人暮らしで、独立した子どもや孫5人と交流が盛ん。ガーデニングや国内旅行、孫との時間を生きがいにしている。家族に迷惑をかけず元気でいたいと願う一方、3年前から続く右股関節の痛みが悪化し、将来への不安を抱えながら人工股関節手術を検討している。
(※本稿に登場する所幸子さんは架空の人物です)
股関節が痛い。もしかして変形性股関節症?
「最近、ちょっとした動作で足の付け根が痛む」そんな違和感を覚えたことはありませんか?
まずは日頃の気になる症状を、専門医の解説とともに振り返ってみましょう。
見落としがちなSOSサイン
ときどき、股関節が痛むんです。どのような原因が考えられるのでしょうか?
股関節が痛む原因にはさまざまな疾患や怪我が考えられます。
特に、日本で多いのは変形性股関節症。その場合には特有の痛みや症状が見られることがあります。
どんな症状が見られるのですか?
一例として、以下のような症状が見られる場合には変形性股関節症が疑われます。
- 動き始めや歩き始めに、太ももの付け根が痛む
- 運動をしたあと、太ももの付け根やお尻が痛くなる
- 寝返りを打つと太ももの付け根が痛い
- 階段の昇り降りがしづらい
- 屈伸運動をすると、膝が痛い
- 歩いているとき、股関節の痛みが気になる
- 膝に痛みや違和感がある


複数当てはまる場合や症状が続く場合は受診することをおすすめします。(*1)
ほかに、変形性股関節症が疑われる症状はありますか?
たとえば日常生活で、次のような困り事がひとつでもあれば、変形性股関節症が進行している可能性が指摘されます。
- スカートやズボンの丈が、左右で合わない
- 整体やマッサージで「左右の脚の長さが違う」と指摘されたことがある
- 歩いているとき、体が左右に揺れていると言われたことがある
セルフチェックで当てはまったら、すぐに変形性股関節症と考えた方が良いのでしょうか?
変形性股関節症を自己診断するのは危険です。
変形性股関節症のほかにも、股関節やお尻の痛みなどを引き起こす疾患はたくさんあるので、それらの可能性も考慮する必要があるからです。
しかしいずれの疾患でも、放置することでどんどん病状が進行してしまうので、上記のような症状がみられる場合にはできるだけ早く整形外科を受診することが大切です。
「どこが痛むのか」がバラバラですが、股関節だけではなく膝が痛いときも注意したほうがよいのですか?
はい。
股関節の異常が、膝や太ももの痛みとして現れることがあります。
そのため、膝の治療をしてもよくならない場合は、股関節に原因がないか確認することが大切です。
変形性股関節症の症状は人によって様々です。
代表的な症状は歩行時の太ももの付け根の痛み、階段昇降時の痛み、爪が切りにくくなるなどですが、人によっては腰の痛み、膝の痛みとして来院される患者さんもいます。
痛みが出現し、経過をみても改善しない場合、医療機関を受診することが大切です。
少しでも気になる症状がある方は、まず専門医にご相談ください。以下のボタンから初診予約が可能です。
変形性股関節症の初期症状
変形性股関節症の特徴は、気づかないうちにゆっくりと進行していくこと。
「まだそれほど痛くないから」と放っておくのは危険です。
ここでは、手遅れになる前に知っておきたい、症状の変化を解説します。
股関節の違和感に潜む異変
変形性股関節症を発症すると、どのような症状が見られるのでしょうか?
主に、関節の痛みと股関節の機能障害が現れます。
病気の進行によって症状も変化し、だんだん重篤化していくという特徴があります。
ただし、初期には自覚症状がないこともあり、気づかないうちに進行してしまうことも少なくありません。
初期にはどのような症状が現れるのですか?
主に、次のような症状が見られるとされています。
- 長く歩いたあと、足がだるくなる
- 動き始めに痛みを感じる
これらの症状は、変形性股関節症の初期症状として典型的なものです。
はじめは痛みの程度が軽く、鈍痛が見られる程度ですが、やがて病気が進行すると鋭い痛みに変わっていきます。(*2)
痛みはずっと続くのですか?
いえ、初期の場合は、「少し休むと痛みがおさまる」「動き始めは痛みがあるが、しばらくすると和らぐ」というように、痛みは一時的なものであるケースが大半です。
日常生活でも症状がありますか?
変形性股関節症は初期、進行期、末期へと進んでいきます。進行期になると、以下の症状が見られることがあります。
また、長い時間、立ったり歩いたりすることが難しくなるので、「買い物に行けない」「家事ができない」「旅行に行けない」など、日常生活に大きな支障が生じるようになります。
- 股関節の痛みで靴下を履けない
- 爪切りがやりにくい
- 和式トイレを使ったり、正座をしたりすることができない
- 階段やバスの乗り降りが難しい(*3)


病気が進むと、どのような症状が見られるのですか?
病気が末期になるとますます痛みが強くなり、安静にしていても痛みが生じたり、夜に寝ていても痛みが続いたりするようになります。
そのほか、末期では以下の症状が見られるとされています。
- 可動域が制限される
- 足の付け根が伸びにくくなる
- 足の長さに左右差が出る
末期になると、日常生活が大きく制限されるのですね。
この頃になると股関節の破壊が進み、強い痛みに悩まされるようになります。
そのため変形性股関節症かもしれないと思ったらできるだけ早い段階で医療機関を受診し、適切に対応することが必要です。
(*2) 公益社団法人 日本整形外科学会
(*3) 公益社団法人 日本整形外科学会「変形性股関節症」
初期症状としては股関節の違和感や長時間立った後の痛み、長距離歩行した時の痛みとして訴える方が多いです。
末期になると日常生活が大きく制限されるので、初期の段階で整形外科を受診し、早期に治療を開始することが大切と考えます。
変形性股関節症になると、なぜ、股関節が痛むのか?
そもそも、なぜ股関節に痛みが生じるのでしょうか。
痛みの理由を理解して、今日からできる予防の第一歩を踏み出しましょう。
痛みのメカニズムと進行予防
そもそも、変形性股関節症になるとなぜ、股関節が痛むのですか?
股関節の表面は本来、軟骨に覆われています。
この軟骨はクッションの役割を果たし、なめらかな動きを助けています。
しかし、先天的な要因や加齢などによりこの軟骨がすり減ると、関節の変形や炎症、骨棘(こつきょく)などを引き起こし、痛みが起きるようになるのです。


先天的な要因とはなんですか?
特に多いのが発育性股関節形成不全(先天性股関節脱臼)や寛骨臼形成不全(臼蓋形成不全)です。
発育性股関節形成不全とは、赤ちゃんの股関節が出生前または出生後に脱臼している状態のこと。
そして寛骨臼形成不全とは、遺伝的要因などによって股関節の一部である寛骨臼の発育が不十分であり、股関節が不安定になる疾患のことを言います。
どちらも変形性股関節症の原因になりやすく、特に変形性股関節症を発症する日本人のうち、約80%の人が、これらの疾患を原因としている、という報告もあります。(*4)
先天的な要因などにより変形性股関節症になりやすい人の場合、どうやって予防したら良いのですか?
変形性股関節症の発症や進行を予防するには、股関節への負担を軽減することが不可欠です。
肥満を改善する、重いものを持たない、長時間立ちっぱなしにならないといったことでも、股関節への負担を減らすことは可能です。
そのほか、股関節を安定させるために太ももやお尻の筋肉を鍛えることも予防に役立ちます。
そのような素因があっても、気をつけることで進行を遅らせることもできるのですね。
そのとおりです。近年は高齢化の影響もあり、はっきりとした原因となる病気がなくても、加齢に伴って変形性股関節症を発症する人が増えています。
そのため、発育性股関節形成不全などの素因がなくても、股関節に過度な負荷を与えず、軟骨のすり減りを助長しない生活習慣が大切です。(*5)
(*4) 公益財団法人 日本股関節研究振興財団
(*5) 公益社団法人 日本整形外科学会
変形性股関節症の原因として特に多いのが発育性股関節形成不全(以前に先天性股関節脱臼、臼蓋形成不全と呼ばれていたもの)です。
赤ちゃんの股関節が出生前または出生後に脱臼している状態や遺伝的要因などによって股関節の一部である寛骨臼の発育が不十分であり、股関節が不安定になる疾患のことを言います。
変形性股関節症を発症する日本人のうち、約80%の人が、これらの疾患を原因としている、という報告もあります。
また高齢化社会に伴い、上記の要因がなくても加齢により変形性股関節症を発症する人も増えてきています。
気になる症状については、一度専門医に相談することが、ご自身の状態を正確に把握するポイント。まずは診察を受けてみましょう。
受診の目安はどう考えたら良い? 放置することの危険性は?
「病院に行くほどではない」「年齢のせい」と受診を先延ばしにすると、様々なリスクが高まっていきます。
元気な足腰で自分らしい生活を長く続けるために、知っておくべき受診のタイミングをお伝えします。
受診に最適なタイミングとは
股関節の痛みを放置すると、どうなりますか?
放置すると股関節などの痛みだけでなく、関節の動く範囲がさらに狭くなり、歩行や立ち座り、爪切り、着替えなど日常動作が難しくなることがあります。
痛みをかばう生活が続けば、筋力低下や活動量の低下にもつながり、生活の質が大きく下がってしまいます。
早めに受診することで、どのようなメリットがありますか?
早い段階で診断を受ければ、運動療法や生活指導、痛みのコントロールなど、手術以外の方法で症状の進行を抑えたり、生活しやすさを保ったりできる可能性があります。
つらくなるまで我慢するより、軽いうちに相談することが大切です。
特に、股関節の痛みに気をつけた方が良いのは、どのような人ですか?
特に、以下に当てはまる人は、変形性股関節症のリスクが高いとされています。
痛みなどの症状があれば早めに受診しましょう。
- 40代以降の女性
- 肥満傾向の方
- 重い荷物を持つ、長時間の立ち仕事など重労働の方
- 日常的に激しいスポーツをしている方
変形性股関節症の治療のポイントは、早期に発見し早期に治療を開始することに尽きます。
早期に生活習慣を見直し、体重管理や、リハビリを開始することで病気の進行を抑えることが可能です。
症状が軽度のうちにぜひ、整形外科を受診してください。
我慢に我慢を重ねた方、日常生活にかなりの障害を出ている方も諦めずに整形外科を受診し、医師と今後の治療計画を立てることが大切です。
歩行できなくなる前にぜひ整形外科を受診してください。
早めに治療を始めることが、進行を食い止める第一歩となります。まずは専門医のもとで診察を受けてみましょう。
まとめ
股関節の痛みは、加齢による一時的な不調と思われがちですが、場合によっては変形性股関節症が隠れていることがあります。
初期には軽い痛みやだるさだけのことも多く、見過ごされることも少なくありません。
しかし進行すると可動域が狭くなり、歩行や着替えなど日常生活に大きな支障が出やすくなります。
気になる症状があれば早めに整形外科を受診し、進行を防ぐようにしましょう。
変形性股関節症のポイント整理
- 股関節の痛みには、変形性股関節症を含むさまざまな原因がある
- 動き始めの痛みや歩行後のだるさは初期症状の代表である
- 膝の痛みや歩き方の変化が、股関節の異常のサインになることもある
- 軟骨のすり減りや関節の変形が、痛みや機能障害を引き起こす
- 放置すると可動域制限や筋力低下が進み、生活の質が下がる
- 早期受診により、運動療法や生活指導で進行を抑えられる可能性がある
変形性股関節症は不治の病ではありません。
お一人おひとりの状況にあった治療を開始することで、ご自身の足で快適に人生を歩んでいくことが可能です。
高齢だから、病気がたくさんあるからと諦めず、ぜひ整形外科を受診し、治療を開始しましょう。
早めの受診で、股関節の健康を守りましょう
「年齢のせい」と諦めてしまう前に、専門医の診察を受けて今の状態を知ることが何よりも大切です。
当院では、経験豊富な整形外科専門医が丁寧に診察を行い、お一人おひとりに最適な治療法を一緒に考えていきます。
一人で悩まずに、ご不安なことはお気軽にご相談ください。
