
聞き手 所 幸子さん
埼玉県所沢市在住の70歳専業主婦。定年後の夫と二人暮らしで、独立した子どもや孫5人と交流が盛ん。ガーデニングや国内旅行、孫との時間を生きがいにしている。家族に迷惑をかけず元気でいたいと願う一方、3年前から続く右股関節の痛みが悪化し、将来への不安を抱えながら人工股関節手術を検討している。
(※本稿に登場する所幸子さんは架空の人物です)
突然の股関節痛…
もしかして「特発性大腿骨頭壊死症」?
股関節に痛みが出た場合、特発性大腿骨頭壊死症の可能性もあると聞きました。本当ですか?
その可能性はあります。
特発性大腿骨頭壊死症とは、股関節をつくる大腿骨頭の一部で血流が低下し、骨組織が死んだ状態になる病気です。
「壊死」とは血が通わなくなって骨が弱くなるという意味。つまり骨組織が壊死することで骨が脆くなって体重を支えられなくなり、骨がつぶれたり、股関節の形が崩れたりしてしまうのです。

股関節の痛み方で、特発性大腿骨頭壊死症かどうかわかりますか?
症状だけでは診断することはできません。
股関節に痛みを引き起こす原因には筋肉や腱のトラブル、変形性股関節症、腰の病気などさまざまあります。
詳しい検査によって、それらと鑑別することが必要です。
この病気は珍しい病気なのですか。
指定難病に含まれる疾患で、他の股関節疾患に比べると頻度は高くありません。
しかし、決してまれな病気ではありません。統計によると、日本での年間新規発生数は約2,000~3,000人であり、好発年齢は全体で30~50歳代、男性では40歳代、女性では60歳代ということがわかっています。
以前、有名な芸能人が発症したことでニュースにもなりましたから、聞き覚えがあるという方も多いのではないでしょうか。(*1)
障害者手帳ももらえるのですか?
股関節の可動域制限や歩行能力の程度によっては障害者手帳を受け取ることができます。
痛みが出たら、すでにかなり進んでいるという証拠ですか?
この病気は、骨壊死が起きた時点では自覚症状がなく、壊死部分がつぶれて初めて痛みが出るという特徴があります。
つまり、骨壊死の発生と痛みの出現には数か月から数年の時間差が生じることがあり、痛みが出たときにはすでに骨の圧潰(あっかい)が始まっているかもしれません。
そのため、股関節に痛みを感じたら、「たいしたことないだろう」などと様子見をせず、早めに医療機関を受診することが大切です。(*1)
まとめ
特発性大腿骨頭壊死症は、大腿骨頭の血流が低下して骨が弱くなり、つぶれたり変形したりする病気です。
難病に指定されている疾患で、男性では40歳代、女性では60歳代に発症しやすいことがわかっています。発症時は無症状のことも多く、痛みが出た時点で進行している場合もあるため、早めの受診と検査が重要です。
股関節の違和感で来院され、検査をすることで発見されることもあります。
股関節がいままでとちがう感じを自覚されたらお近くの医療機関を受診することをお勧めします。
早期受診、早期診断で病気の進行が抑えられるケースもあります。
初期症状から進行まで
―見逃されやすいサインとは
初期にはどんな痛みが出るのですか?
代表的なのは、比較的急に始まる股関節の痛みです。
ただし、必ずしも「股関節が痛い」とはっきり感じるとは限らず、膝やお尻、腰などの痛みとして始まることもあります。そのため、膝や腰の病気と思って見逃されることもあります。(*2)

なぜ、膝やお尻の痛みとして感じるのですか?
実際に傷めている部位と異なる部位に生じる痛みを「関連痛」と言います。股関節の一部が壊死したことにより、股関節まわりの筋肉や関節包が緊張し、その影響が腰まわりの筋膜や神経の通り道に及ぶことで、膝やお尻などの痛みとして感じられることがあるのです。
そうなると、股関節以外の部位に痛みが出た場合でも、特発性大腿骨頭壊死症の可能性があるということですね。
研究により特発性大腿骨頭壊死症では、鼠径部(そけいぶ)痛が最も多い一方で、関連痛も高頻度にみられることがわかっています。
過去に行われた調査では、鼠径部痛が93%と最多であり、次いで膝痛が68%、大腿前面痛が36%、殿部痛が34%でした。全体の77%に関連痛がみられ、特に膝や下腿の痛みが多く、腰痛は比較的少ないことが明らかになっています。(*3)
痛みはずっと続くのですか。
初期の痛みは、安静にすると2~3週で軽くなることがあります。
そのため、この段階で見逃してしまう人が多いのですが、再び痛みが強くなったときには、すでに骨頭の圧潰が進んでいることがあります。
「痛みが良くなったから」といって油断してしまうと、症状の進行を招くことがあるので注意が必要です。(*2)
痛みのほか、どのような症状が見られることがありますか?
痛みのほかに特徴的な症状は跛行(はこう)です。
これは足をひきずるような歩き方であり、痛みや違和感などにより、正しく歩くことが難しくなって起こります。(*4)
進行は早いのでしょうか?
長い時間をかけて進行する変形性股関節症とは異なり、特発性大腿骨頭壊死症は比較的急に発症します。
そのため、発症初期には関節の変形による可動域制限や機能障害はあまり目立ちませんが、壊死が生じた範囲の広さと位置によって、予後が大きく左右されるので注意が必要です。(*4)
どういうことでしょうか?
特に、体重が集中する骨頭の上前方に広い範囲で壊死がある場合は、骨が圧潰しやすく、病状も進みやすくなります。
一方、壊死の範囲が小さく、荷重のかかりにくい部位に限局している場合は、大きな支障なく経過することもあります。
今後の見通しを判断するうえでは、MRIなどで壊死の範囲と位置を正確に確認することが重要です。
(*2) 公益財団法人 難病医学研究財団/難病情報センター
(*3) 公益財団法人 日本股関節研究振興財団
(*4) 公益社団法人 日本整形外科学会
まとめ
特発性大腿骨頭壊死症は、初期には比較的急に股関節痛が現れますが、膝やお尻、腰の痛みとして感じられることもあり、見逃されやすい病気です。
一旦痛みが軽くなっても安心はできず、再燃時には骨頭の圧潰が進んでいることもあります。
進行のしやすさは壊死の範囲や位置に左右されるため、MRIによる早期評価が重要です。
他院で診断がつかず、来院され診断がつくケースもあります。膝の痛み、大腿部の痛み、臀部の痛みで見逃されるケースもあります。
また大腿骨頭壊死症は壊死の部位や範囲によって今後の経過をある程度把握することができます。
股関節専門の医師に相談しましょう。
特発性大腿骨頭壊死症はなぜ起こる?
発症メカニズムとリスク因子
なぜ大腿骨頭が壊死してしまうのですか。
大腿骨頭の血流が障害されることで、骨組織に十分な酸素や栄養が届かなくなり、壊死が起こると考えられています。
一体何が原因で壊死が起きるのかについては、今も研究が続けられていますが、まだ詳細は不明のままです。病気と関連が疑われる因子はいくつか解明されつつありますが、十分には明らかにされていません。
原因不明ということですか?
はい、しかし特発性大腿骨頭壊死症と関連が深い因子はいくつか指摘されています。
国際的に関連が認められているのは、ステロイドとアルコールです。
もう少し詳しく教えてください。
ステロイドは代表的な関連因子のひとつであることがわかっています。
国際的な定義として、3か月以内に累積2gを超えるプレドニゾロン、または同等力価の糖質コルチコイド投与歴があり、投与から2年以内に特発性大腿骨頭壊死症と診断された場合、「ステロイド関連」とされています。
日本では新たに発生する特発性大腿骨頭壊死症のうち、約50%がステロイド性であることがわかっています。(*5)
ステロイド薬はどんな疾患に対して投与されるのですか?
ステロイド関連の特発性大腿骨頭壊死症を発症した人のうち、最も多かったのは全身性エリテマトーデス(SLE)の患者さんであることがわかっています。そのほかにはネフローゼ症候群、多発性筋炎・皮膚筋炎、気管支喘息、血小板減少性紫斑病などの患者さんもいます。
ステロイド薬使用に伴って特発性大腿骨頭壊死症が発生するケースがあるのは確かですが、現段階では副作用と呼ぶべきかどうかは、結論が出ていません。
すでに処方されているステロイドを自己判断で中止したり、量を減らしたりするともともとの病気が悪化することもあるので、必ず医師の指示に従うようにしましょう。(*5)(*6)
アルコールについては、どのような関連があるのでしょうか?
国際的な定義では、アルコール量400mL/週、もしくは320 g /週を超える飲酒を6か月以上続け、その用量での飲酒開始から1年以内に特発性大腿骨頭壊死症と診断された場合を「アルコール関連」としています。
大量飲酒が続く人で股関節痛が出た場合は、このことを念頭に置く必要があります。(*6)
ほかにどのような原因が考えられるのでしょうか?
喫煙も危険因子として挙げられています。
喫煙は血流障害や血管内皮機能への悪影響を介して、骨頭への血流低下に関わる可能性があります。
もちろん喫煙だけで必ず発症するわけではありませんが、ほかの危険因子と重なるとリスクが高まると考えられます。
持病が関係していることもありますか?
はい。
運動不足や偏った食事など不健康な生活習慣などによって起こる活性酸素による酸化ストレス、血管の働きの異常、血液が固まりやすくなること、脂質代謝の乱れ、脂肪塞栓、骨細胞の自然死など、さまざまな要因の関与も考えられています。
なかでも近年は、血管内皮細胞の機能障害が特に注目されています。ただし、どれが決定的な原因なのかはまだ十分に解明されていません。現在も、動物実験や臓器移植患者を対象とした研究が続けられています。(*7)
この病気は遺伝するのですか?
遺伝との関連性はまだ明らかにされていません。
しかし、ステロイドを投与したり喫煙歴があったりしても、必ずしも全員が疾患を発症するわけではないことから、個人の遺伝的背景も深く関与しているのではないかと考えられています。
実際、ゲノム研究により大腿骨頭壊死症と関連の深い遺伝子が発見されたとの報告もあり、今後の研究が待たれています。(*8)(*9)
(*5) 厚生労働省 重篤副作用疾患別マニュアル
(*6) 公益財団法人 難病医学研究財団/難病情報センター
(*7) 厚生労働省 71 特発性大腿骨頭壊死症
(*8) 関節外科 基礎と臨床 40巻12号 (2021年12月発行)
(*9) 九州大学
まとめ
特発性大腿骨頭壊死症は、大腿骨頭への血流障害によって起こると考えられていますが、決定的な原因はまだ解明されていません。
関連因子として、ステロイド、大量飲酒、喫煙が知られており、酸化ストレスや血管内皮機能障害などの関与も指摘されています。
そのほか、発症には遺伝的背景も関わる可能性があります。
特発性大腿骨頭壊死症は原因がはっきりわかっていない病気ですが、近年の研究で徐々に原因が解明されつつあります。ステロイドを大量に使用した方、お酒を大量に飲む方などは発症しやすいといわれております。
今後研究が進めば、新たな治療法が開発されるかもしれません。
特発性大腿骨頭壊死症の診断基準と
画像検査の流れ
疾患が疑われる場合には、どのような検査を行うのですか?
通常は問診と診察に続いて、股関節の単純X線検査が行われます。
ただし、この病気は早期にはレントゲンで異常が見えないことがあります。そのため、疾患が疑われる場合にはMRIの検査を行います。
特にステロイドを大量に投与した経歴や、アルコールを愛飲した経歴のある患者さんが股関節の痛みなどの症状を訴えた場合は、レントゲン検査で骨壊死所見が明らかでなくても MRIを撮像することが望ましいとされています。(*10)
レントゲンやMRIでは、どのような変化をみるのですか。
レントゲンでは、壊死の周囲で骨が硬くなることで「帯状の白い影(帯状硬化像)」が見えることがあります。一方、MRIでは壊死した部分と正常な骨との境目が「バンド像」として描出されます。これらは特発性大腿骨頭壊死症を疑う際に、重要な所見とされています。
どちらも帯のように見えますが、レントゲンは骨の硬さの変化、MRIは壊死の境界を示しており、意味は異なります。
さらに病気が進んで大腿骨頭がつぶれてくると、関節の表面がでこぼこになったり、軟骨のすぐ下に骨折線のような線がレントゲンで見えたりします。こうした所見を crescent sign といいます。
そのほか、どのような検査を行うのですか?
場合によっては、テクネチウムシンチグラフィー(骨シンチ)検査を実施する場合もあります。
骨シンチグラフィーは、骨頭の血流や代謝の異常を反映する所見をみる検査です。他部位の壊死も同時に診断したい場合に骨シンチグラフィーを行うことがあります。(*11)
また、骨頭内の壊死した骨組織を直接確認し、他の疾患と区別するため骨生検を行うこともあります。
どのような基準で確定診断されるのですか?
X線、骨シンチグラム、MRI、骨生検の所見のうち2項目以上を満たすと、特発性大腿骨頭壊死症と診断されます。病期は画像診断の結果、1期から4期の4つに分類されます。
ただし、同様の症状を示す疾患には外傷性の骨頭壊死や大腿骨頭すべり症などの疾患もあり、検査によってこれらを除外することが必要です。そのため画像診断の結果だけを見るのではなく、発症の背景や除外診断も含めて総合的に診断します。(*10)

(*10) 厚生労働省 71 特発性大腿骨頭壊死症
(*11) 公益社団法人 日本整形外科学会
まとめ
特発性大腿骨頭壊死症が疑われる場合は、まず問診・診察と単純X線検査を行い、必要に応じてMRIを追加します。
レントゲンでは骨頭の変形や圧潰、MRIでは早期病変を示すバンド像を確認します。
場合によっては骨シンチや骨生検も行い、ほかの疾患を除外したうえで総合的に診断します。
特発性大腿骨頭壊死症は問診(アルコール多飲歴やステロイドの投与歴など)や身体所見からまず「疑う」ことから始まります。そこからX線検査、MRI検査などを施行し診断に至ります。
特発性大腿骨頭壊死症は治る?
保存療法と手術療法を解説
どのようにして治療法を選択するのですか?
治療法は、年齢、仕事や活動性、内科的合併症、片側か両側か、壊死の大きさと位置、病期などを総合して決めます。
症状や病態だけでなく、年齢や仕事なども大事なのですか?
はい、一般に特発性大腿骨頭壊死症の治療法には、手術を伴わない保存療法と、手術によって治療する手術療法があります。
保存療法の方が体への負担が少なく、入院やリハビリの期間が不要というメリットはありますが、その一方、保存療法では進行を抑制する効果はあまり期待できません。
また手術を行うにもさまざまな術式があり、若くて活動性の高い人と、高齢で活動性が低下している人では選択すべき術式が異なります。
そのため、治療法を考えるときには、患者さんの年齢や仕事、活動性なども考慮に入れる必要があるのです。
保存療法では完治が見込めないのですか?
現時点では、壊死そのものを薬で治して進行を確実に止める標準治療は確立していません。
そのため、保存療法は主に痛みの緩和や生活上の負担軽減を目的に行い、病型や病期によっては手術のタイミングを逃さないことが非常に重要になります。
1. 保存療法
保存療法ではどのようなことを行うのですか?
まずは生活習慣を見直します。
症状の進行を抑制するため、杖などを使って股関節への荷重を減らすこと、痛みが強い時期は安静を保つこと、体重を適正に保つこと、長距離歩行や重量物運搬を避けることなどを指導します。
痛みに対しては、どのような薬を使うのですか?
主に鎮痛消炎剤を投与することで対処します。
そのほか、大腿骨頭の圧潰や痛みの進行を抑えるため、骨粗鬆症の治療などに用いられるビスホスホネート製剤(アレンドロネートなど)を使用することもあります。
そのほか、股関節周辺の筋力を強化するため、適切な強度で運動療法も行います。
保存療法の対象になるのは、どんな人ですか?
壊死の大きさや位置から予後が比較的よいと判断できる場合や、まだ症状が出ていない場合は、まず保存療法が選ばれます。
保存療法を行っている時に痛みが消えたら安心して良いのでしょうか?
いえ、治療によって痛みが軽くなること自体は珍しくありません。
実際に、初期は杖や安静、投薬で痛みが治まる場合が多いことがわかっています。
ただし、痛みが治まっても圧潰の危険が消えたとは限りません。壊死域が広い場合や骨が弱い条件が重なる場合には、痛みがいったん引いても変形が進むことがあるため、自己判断で治療をやめないことが大切です。(*12)
どんなタイミングで手術を検討すれば良いでしょうか?
これらの保存療法を行っても、壊死の範囲が広い場合には、大腿骨頭の圧潰が進んでしまうことがあります。
圧潰が進み、股関節などの痛みが強くなって日常生活に大きな支障が出るようになった場合には、手術療法を検討します。
進行してから手術を行うと、手術の難易度が上がることもあるため、定期的に検査を受けて進行度を確認し、適切なタイミングで手術へ移行することが必要です。
2. 手術療法
手術にはどのような方法がありますか?
一般に、若年者ではまず自分の関節を残せる骨切り術が第一選択になります。
一方、壊死が広い、圧潰が進んでいる、関節症変化が強いといった場合は人工股関節置換術が必要になることがあります。(*13)
骨切り術とはどのような手術ですか?
骨切り術とは、骨を切って向きや角度を調整し、体重がかかる位置を変える手術です。
特発性大腿骨頭壊死症では、壊死していない健常な部分が股関節の荷重面にくるように大腿骨の形を変え、骨頭の圧潰を抑えながら自分の関節を残すことを目指します。
若い方で、まだ関節の変形が強くない場合に検討されることが多いですね。

人工股関節は、どんな場合に選ばれるのですか。
壊死範囲が大きい、骨頭圧潰が進んでいる、すでに明らかな関節症性変化がある、痛みのためQOLが著しく落ちている、といった場合には人工股関節置換術が有力な選択肢になります。
痛みの改善という点では非常に有効とされています。
最近、人工股関節の手術を受ける人が増えていると聞いたことがあります。
はい、人工股関節の手術は特発性大腿骨頭壊死症のほか、変形性股関節症などさまざまな疾患に用いられる術式です。
骨切り術に比べると、人工関節置換術は術後早い段階から体重をかけることが可能であり、入院期間も比較的短くてすむという利点があります。
ただし、人工関節には耐用年数があるため、将来的に再置換術が必要になる可能性もゼロではありません。
そうなると、再手術が必要ということですか?
近年、医療技術が進化したことにより人工股関節の寿命は伸びています。
しかし若年者はその後の人生が長い分、人工股関節の寿命を十分に考慮しなければなりません。
そのため、まずは骨切り術で自分の関節を残せる可能性を慎重に検討し、人工関節置換術の適応は慎重に判断することが大切です。(*13)
手術費用は保険が使えるのですか?
はい、健康保険のほか、高額療養費制度を活用すれば自己負担を抑えることができます。
詳しくは医療機関にご相談ください。
(*12) 公益社団法人 日本整形外科学会
(*13) 公益財団法人 難病医学研究財団/難病情報センター
まとめ
特発性大腿骨頭壊死症の治療法は、年齢や活動性、壊死の範囲・位置、病期などを踏まえて選択します。
保存療法は荷重制限や鎮痛、生活指導によって症状を和らげる方法ですが、壊死した骨を再生させることはできません。
進行して痛みや日常生活への支障が強くなれば手術を検討します。手術を行う際には、若年者では骨切り術で関節温存を目指し、進行例では人工股関節置換術が選択されるのが一般的です。
治療法に関しては、患者さんのご年齢、生活背景、壊死の範囲や部位などを総合的に把握して、患者さんと相談しながら決定していきます。
手術をせずに経過をみられる患者さんもいらっしゃいますが、生活にかなりの支障をきたし、手術を選択される患者さんもいらっしゃいます。
是非信頼できる医師を見つけて相談しながら治療してください。
特発性大腿骨頭壊死症は予防できる?
発症後も進行を防ぐことは可能なのか?
日常生活で、まず意識すべきことは何ですか。
重要なのは痛みを我慢して無理に歩き続けないことです。
特に症状が強い時期は、杖による免荷、長距離歩行の制限、重量物運搬を避けることが基本になります。
飲酒や喫煙は見直したほうがよいのでしょうか。
お酒と喫煙はともに危険因子として挙げられているため、それらを控えることは予防に役立つだけでなく、進行を抑制するために重要と考えられています。
特にお酒が原因で疾患が発症したと考えられる場合、片方の股関節に発症したあと、時間をおいてもう一方にも症状が見られるようになることは少なくありません。そのため、発症後でもお酒を控えることは重要です。

早期に受診した方が良いのはなぜですか?
特発性大腿骨頭壊死症は、壊死域の大きさや位置によって将来の圧潰リスクがある程度予測でき、変形が進む前なら骨頭温存手術が選べることがあります。
反対に、痛みを我慢して受診が遅れると、圧潰や関節症が進み、人工股関節しか選択肢が残らないこともあります。
急な股関節痛や、膝やお尻などの痛みがあれば、早めに整形外科を受診することをお勧めします。
まとめ
特発性大腿骨頭壊死症の進行を防ぐには、痛みを我慢して無理に動かず、杖の使用や長距離歩行・重い荷物を避けることが大切です。
飲酒や喫煙も進行に関わるため、見直しが必要です。
早期に受診すれば骨頭を温存できる治療を選べる可能性があり、将来の関節機能を守ることにつながります。
進行予防には股関節にかかる負担を軽減されることが一番です。体重が重い人は減量する、杖を使用する、重労働は避けるなどです。運動するなら水中歩行やエアロバイクなどがおすすめです。
全体のまとめ
特発性大腿骨頭壊死症は、大腿骨頭への血流障害によって骨が弱くなり、圧潰や関節の変形を招く病気です。初期には股関節痛だけでなく、膝やお尻の痛みとして現れることもあり、見逃されやすいのが特徴です。
発症にはステロイド、大量飲酒、喫煙などが関与すると考えられており、診断にはX線やMRIが重要です。治療は壊死の範囲や進行度、年齢、活動性に応じて保存療法と手術療法を選択します。
進行を防ぐには、痛みを我慢せず早期に受診し、生活習慣の見直しも含めて適切に対応することが大切です。
股関節に痛み、違和感を感じたら股関節専門医を受診してください。
そこで特発性大腿骨頭壊死と診断されても落ち込まないでください。
不治の病ではありません。治療法が確立された疾患です。
ご自身の人生を最後までご自身の足で歩くために信頼できる医師を見つけて相談しましょう。
ポイント整理
- 特発性大腿骨頭壊死症は、大腿骨頭の血流障害によって骨が弱くなり、圧潰や変形を起こす病気である
- 初期症状は股関節痛に限らず、膝やお尻、腰の痛みとして現れることがある
- 発症にはステロイド、大量飲酒、喫煙などが深く関与すると考えられている
- 診断には単純X線検査に加え、早期発見に有用なMRIが重要
- 治療法には保存療法のほか、骨切り術や人工股関節置換術がある。年齢や活動性、壊死の範囲、症状などを考慮して選択する
- 早期受診により骨頭温存の可能性が広がり、将来の関節機能を守りやすくなる
